都市とSFはどこで交わるか

2021.10.03
都市とSFはどこで交わるか

以下イベント告知文より


僕は大学で建築を学んだ後、植物コンピュータに覆われた近未来の東京を舞台にしたSF小説『コルヌトピア』を書いて作家活動を始めました。それまで「都市」「ランドスケープ」「プロジェクト」といった複数の切り口からバラバラに考えていたことが、急に架空の未来世界として結像してくる期間があったのです。

どうやら、都市・建築学とSF(の一部)は僕にとっては隣接分野であるようです。デビュー作に限らず、これまでの発表作品の多くが、何らかのかたちで未来の都市像を含んでいます。関心を持つ対象や追い求めたい感覚は、学生時代からそれほど大きくは変わっていないのかもしれません。

ただし「SF小説を書くことは未来の都市を設計することだ」などと言うつもりはありません。文芸には文芸の、デザインにはデザインの問題系があり、僕は今のところ、その間で引き裂かれたり揺れ動いたりすることで制作を続けています。

今回は自分の作品の中から都市・建築に関連する部分を取り出し、それを材料に都市とSF、デザインとフィクションの関係性についてみなさんと考えたいと思っています。
(津久井五月)

トピック(予定)

  • 建築からSF小説への“逸脱”――ランドスケープとシチュアシオニスト
  • 他者の居場所としての都市――『コルヌトピア』
  • 都市の中に見え隠れする自然――「地下に吹く風、屋上の土」
  • 都市の死――「粘膜の接触について」
  • 都市の欲望――「イドを探して」
  • 建築と都市の間を繋ぐフィクション――『建築小説集』

プロフィール

津久井五月

建築、都市、文学

1992年生まれ。テクノロジーによる人間や社会の変容に関心を持って小説を執筆している。東京大学・同大学院で建築学を専攻。2017年「天使と重力」で日経「星新一賞」学生部門準グランプリ。クマ財団の支援クリエイター1期生。『コルヌトピア』でハヤカワSFコンテスト大賞。2021年「Forbes 30 Under 30」(日本版)選出。作品は『コルヌトピア』(ハヤカワ文庫JA)、「生前葬と予言獣」(『AIとSF2』ハヤカワ文庫JA)、「友愛決定境界」(『AIとSF』ハヤカワ文庫JA)ほか。 (2025.7)