マリオ・カルポをどう読むか

2018.02.09
マリオ・カルポをどう読むか

コンピュータが建築学と関わりを持ち始めてから、ようやく半世紀ほどの時間が過ぎた。初期の理論的・理念的な探求の時代は終わり、実社会での建設におけるコンピュータの貢献は、CAD等による業務支援のレベルから、図学的に全く新しい形態の実現まで、陰に陽に決定的なものとなったと言えるだろう。ゆえにこそ、建築理論としてコンピュータを取り扱う必要性は日に日に高まっている。

メニカン#01では、ルネサンス建築を専門としながら、コンピューテーショナル・デザインの理論化としての顔も持つ異色の建築史家、マリオ・カルポの三つの著作『Architecture in the Age of Printing (2001)』『The Alphabet and the Algorithm( 2011)』『The Second Digital Turn (2017)』を導きの糸としつつ、米コロンビア大学で議論されてきた建築学におけるコンピュータの位置取りを概観することで、未来の建築を占う補助線を共有することを狙った。

レクチャーを通して解説したカルポによる一連の立論については、これに対する加藤耕一の批判、およびデイビッド・ルイによるペーパーレス・スタジオ批判をあわせて参照しつつ、双方に対するレクチャラからの再批判を組み込むことで、立体的に検証することを試みた。

なお、レクチャーでも扱ったカルポの最新刊『The Second Digital Turn (2017)』については、建築学会のウェブメディア「建築討論」にて、同レクチャラによる書評『Mario Carpo, “The Second Digital Turn: Design Beyond Intelligence” 建築的想像力の最果て(評者:中村健太郎)』が掲載されている。あわせて参照されたい。

文責:中村健太郎

プロフィール

中村健太郎

建築、デザイン、都市

研究者・プログラマ。1993年大阪府生まれ和歌山県育ち。情報技術とデザイン・建築・都市の関係に関心。2016年慶應義塾大学SFC卒業後、NPO法人モクチン企画(現CHAr)ソフトウェアエンジニア、東京大学建築学専攻学術専門職員を経て、現在東京大学学際情報学府博士課程在学中。共訳書に『スマート・イナフ・シティ──テクノロジーは都市の未来を取り戻すために』(2022, 人文書院)。